鉄のフライパンを、自分でハンマーで叩いて作れる場所があるのをご存じですか?
広島県福山市・鞆の浦の鉄鋼団地にある「santo(サント)」に行ってきました。100年以上続く錨づくりの技術「鍛造(たんぞう)」を体験できる、鉄工所が営む工房です。

エントランス。錨のオブジェと、木の大屋根が出迎えてくれます
鞆の浦の「鞆鍛冶」を未来へつなぐ工房
santoを運営するのは、鍛造と自動車部品などの金属加工を手掛ける株式会社三暁(さんぎょう)さんです。1951年に鞆の浦の鍛冶町で創業し、1965年に現在の鉄鋼団地へ移転された会社です。
鞆の浦は江戸時代から海運の要所として栄え、船の錨を作る「鞆鍛冶」の文化が根付いた町です。その錨づくりの技術を、今の暮らしに合うプロダクトと体験に変えて発信しているのがsantoです。オープンは2022年8月です。

館内には「月刊タウン情報おかやま」の紹介記事も掲示されていました
建物は福山市出身の建築家・前田圭介氏の設計で、工場のスレート外壁を活かしながら、大きなテーブルのような木の屋根を架けた印象的な空間です。館内にはイタリアの国際建築賞で奨励賞を受賞したことを伝える新聞記事も貼られていました。
鉄と木とコンクリートのショップ
中に入ると、波打つコンクリートのカウンターに鉄のプロダクトがずらりと並びます。DJブースまであって、工房というより感度の高いセレクトショップの雰囲気です。

アイアントレイやお香立てが並ぶカウンター
槌目(つちめ)が入ったアイアントレイ、お香立て、手作りのスプーン(2,800円)など、どれも一点ずつ表情が違います。

「santoペーパーウエイト」4,200円。丸棒が叩かれて形になる工程が分かる展示
ペーパーウエイトの展示は、円柱の鉄が叩かれて平たくなっていく過程を並べて見せていて、鍛造の仕組みが一目で分かります。こういう「工程を見せる」売り方はとても上手だと感じました。

上下町の伝統工芸とのコラボ「ティッシュボックス」とカラフルな錨
木工×鍛造のティッシュボックスは、府中市上下町の伝統工芸と三暁さんの鍛造技術を組み合わせたコラボ商品です。地域のものづくり同士がつながっているのも素敵です。

アウトドアブランド「cocinero」のフライパンも展示販売
鍛造体験は「選ぶ・熱する・叩く・刻印」の4工程
santoのメインは、隣の工場で本物の職人さんと一緒に行う鍛造体験です。所要時間は約2時間です。

「鍛造体験プラン」の案内
- 01 選ぶ:形や厚みの違う金属から好きな材料を選びます
- 02 熱する:重油炉またはコークス炉で1,000℃以上に加熱(危険なのでスタッフが担当)
- 03 叩く:真っ赤な鉄をハンマーで叩いて成形。冷えたら再加熱して繰り返します
- 04 刻印・研磨:スタッフが研磨し、好きなアルファベットと数字を刻印して完成
当日は専用の作業着に着替えるので、服の汚れを気にしなくて大丈夫です。

隣の工場には「鍛造体験 お客様待機場所」の看板
待機場所は本物の工場の中です。使い込まれた金床や材料が並び、ここで1,000℃の鉄を叩くのかと思うと気分が上がります。

体験で作れるフライパンやトレイの見本
見本を見ると、丸型・角型・持ち手の形まで本当にさまざまです。叩いた凹凸がそのまま槌目の模様になり、世界に一つの鉄フライパンになります。

「鍛造中華鍋」はオーダーも受付中
料金(税込)

館内に掲示されていた価格表
- フライパン(Mサイズ)丸型・角型:各16,000円
- アイアントレイ(S〜Mサイズ):16,000円
- お香立て(コーン型):16,000円
- お香立て(スティック型):26,000円
- フライパン油ならし(オプション):1,200円
- 見学者(備品管理費用):1,200円
価格表を見た瞬間は「なかなかのお値段」と正直思いました。ただ、約2時間の職人さんマンツーマンの体験と、一生使える鉄フライパンが手元に残ることを考えると、納得感のある設定だと感じます。
予約は三暁さんのWebサイトの専用フォームから行い、担当者からの返信で日程を調整する流れです。
もっと気軽に「鉄の刻印体験」も

鉄プレートの刻印体験。形はハートや星、錨まで
- Sサイズ:1,000円(6文字)
- Mサイズ:1,500円(8文字)
- Lサイズ・SP:2,000円(12文字)
- 錨型:2,500円(12文字)
予約なしで楽しめる手軽な体験で、キーホルダーにちょうど良いサイズです。旅の記念に名前や日付を刻むのも良さそうです。

刻印用の打刻セット。切り株の作業台が雰囲気満点です
暖炉と焚き火バーでひと休み

屋外のバーカウンター
半屋外のエリアにはバーカウンターがあり、アイスコーヒー(700円)やボトルのソフトドリンク(500円)、ビール(900円〜)がいただけます。

「santo」のロゴが抜かれた暖炉。鉄フライパンでポップコーンも作れます
暖炉では専用のフライパンで自分で作るポップコーンも楽しめます。不定期でポップアップショップや焚き火バーも開催されているそうなので、Instagramをチェックしてから行くのがおすすめです。
メーカー目線で感じたこと
私自身、製造業の経営に携わっている立場から見て、santoは「工場の技術を体験価値に変える」お手本のような場所だと感じました。
BtoBの鍛造技術は、本来エンドユーザーの目に触れにくいものです。それを、建築・プロダクト・体験・飲食まで一つの空間に編集し、「鞆の浦の観光」の文脈に乗せている点が見事です。工程を見せる展示、価格表の分かりやすさ、Instagramでの発信まで一貫していて、町工場のブランディングとしてとても学びの多い訪問でした。
こんな方におすすめ
- 鉄フライパンやキャンプ道具が好きな方
- 鞆の浦観光で「ここでしかできない体験」を探している方
- ものづくりや建築が好きな方
- 記念日やプレゼントに一点ものを作りたい方
santo 店舗情報
- 住所:広島県福山市鞆町後地26-30
- 営業時間:11:00〜18:00(定休日は公式Instagramでご確認ください)
- 鍛造体験:要予約(三暁Webサイトの専用フォームから)
- 支払い:現金・PayPay(鍛造体験)
- Instagram:@tanzou_taiken(鍛造体験)
- 運営:株式会社三暁
※料金・営業時間は訪問時の掲示によるものです。最新情報は公式サイト・Instagramでご確認ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次は実際にフライパンを叩きに行ってみたいと思います。よろしければフォローしていただけると嬉しいです。
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